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真空微浸炭技術

中炭素合金鋼(SCM435)に対する新規「真空微浸炭」熱処理

新規「真空微浸炭」熱処理の開発

当社では、中炭素(合金)鋼(SCM435)に対し、従来の「ガス調質」に比して高強度+高靭性な機械的特性を付与する「真空微浸炭」を開発しました。「高靭性化」ならびに「耐疲労強度の向上」により、これまでにない魅力的な高機能製品の提供が可能となります。
一例として、従来と同一の締結条件下で使用される締結部品では、より高寿命が実現でき、中でも高抗張力が発生する箇所の締結に用いられるClass12.9ハイテンボルトや取り外しが頻繁に行われる「少径サイズ」ボルトに最適な熱処理です。
また、各種製品のサイズや使用用途に応じた要求性能を満足させる「硬度推移曲線」を自由にカスタマイズできるので、既存部品に新たな最適機能が追加可能です。

従来の熱処理方法が抱える問題点

従来の「ガス調質」熱処理では炉内雰囲気CP値と素材炭素含有量とのアンマッチングという技術的問題が不可避で、結果、幾ばくかの「脱炭」または「浸炭」が発生します。(これを受け、ねじ関係規格JIS B1051の強度区分Class 12.9は「表面硬さ465Hv.最大」、「心部硬さ435Hv.最大(385Hv.最小)」と規定しています。) 一般的に雰囲気熱処理では数μm~数10μm程度の粒界酸化層が形成され、疲労強度低下の一因となっています。
また、中炭素(合金)鋼は「ガス調質」熱処理するのが通例で、一般的に「浸炭」熱処理を施すことはありません。通常の「浸炭」熱処理を行うと、処理物の表面硬さは高く、硬化層は深くなることから、「引張応力」はClass12.9規格値を満たすものの、「伸び」や「シャルピー衝撃値」といった靭性は規格値より大幅に低下し、規定された要求性能を満たすことが出来ません。

JIS規格内で硬度推移をカスタマイズ可能、強度や疲労強度を向上させます!

硬度推移曲線

試験片の表面から1/4深さである「2.50mm」までの硬度推移です。
新規熱処理方式では表層からのなだらかな硬度低下となっているのに対し、従来方式では表面付近が脱炭気味となっています。
JIS規格Class12.9では表面硬さ(465Hv.max.)と心部硬さ(385Hv.min.)が規定されているので、この間の硬度推移曲線を各種製品の用途やサイズに応じた希望の傾きとすることができ、従来の「ガス調質」では叶えることのできなかった最適の機械的性質をお好みのようにデザインできるようになりました。

JIS規格内で硬度・粘さをカスタマイズ、製品の用途に応じた性能を付与可能に

機械的性質の比較表(従来の「ガス浸炭」と「真空微浸炭」との比較例)

素材:SCM435
ガス調質真空微浸炭
焼戻し(A)焼戻し(B)
最大荷重(N)6923.716968.947232.08
応力(MPa)1730.9261742.2351808.021
変位(mm)1.7581.9901.869
伸び率(%)2.9303.3163.116
最大荷重(Kgf)706.022710.634737.467
シャルピー(J)26.7536.5125.15
従来のガス調質に比べ、「真空微浸炭」(焼戻しA)は「伸び率」、「シャルピー衝撃値」とも大幅にアップしており、「真空微浸炭」(焼戻しB) は「引張応力」1,800MPaを満足させながらも「伸び率」は上回り、「シャルピー衝撃値」は同程度となりました。
このように、「真空微浸炭」では「焼戻し温度」を調整することにより「強さ」と「粘さ」と云う相反する機械的性質を高い次元でバランスさせる事が可能です。

疲労強度UPによる、高寿命化の達成を実現

破断繰返し数

M6-1.0ボルト谷径に準じた評価部径φ5.1mmサンプルによる疲労試験結果です。試験停止条件は破断または最大繰返し数「500万回」到達時としております。
従来の「ガス調質」試料は「公称応力750MPa」で500万回到達であったのに対し、「真空微浸炭」試料では「公称応力850MPa」で500万回到達となっており、一般的なネジの疲労限強度は約13%向上しています。
また、「公称応力800MPa」条件下では「ガス調質」試料の10万回破断に対し、「真空微浸炭」試料では500万回で未破断と、実に「50倍」の疲労限となりました。

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